『心音の森の妖精物語』第6話 〜狙われたココロ〜(201.01.18.放送)
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《作・絵》佐々木心音 《語 り》佐々木裕子 《音 楽》CO906. |
《声の出演》 ココネ、白樺:佐々木心音 |
『心音の森の妖精物語』第6話 〜狙われたココロ〜(オリジナル・シナリオ)
今にも雨が降り出しそうな、グレーの空が何日も続いたある日のことです。
葉っぱのゆりかごでぐっすりと眠った、森の妖精“ココネ”は、“森のカマクラ”へと向かっていました。
『カマクラが溶けちゃうから、雨さん、まだ降らないで。お願い。』
ココネはそう呟きながら、空を見上げました。
するとその時、こころの森に立っている、白樺の木々たちのざわめきが聞こえてきました。
『どうしたの?みんな!』
ココネが急いで、白樺の元へ向かうと、
「ココネ、大変なんだ!猿たちが、暴れているんだ!」
白樺たちは、口々にそう言いました。
猿たちは、この森でもよく問題を起こしていました。
人間たちの食べ物をどこからか見つけて来ては、食べ、大騒ぎをしながらこの森に戻ってくるのです。
その度にココネは、『迷惑かけることをしたら、駄目なのよ!』
と、注意をしていました。ですが、その癖はなかなか治りません。
ココネは、そんな猿たちに頭を抱えていました。
『また何か持って帰って来ちゃったのかしら…』
ココネはそう思ったのですが、今回はなんだか様子が違うようです。
猿たちは、起こった眼をしながら、白樺たちの枝を折り、何かを追いかけていました。
そう、リスのリンリンたちです。
「ねえ、やめて!なにするのよ!!」
リンリンたちは必死に逃げていました。
『ちょっと、どうしちゃったの!?ねえ、ねぇってば!』
ココネは必死に猿たちに話しかけますが、届きません。
そこで、ココネは猿たちの心の声を聞いてみることにしました。
『リンリンたちが、なにか怒らせるようなことをしたのかしら…』
しかし、ココネの予想は外れました。
猿たちの心の声を聞くことができないのです。
『え?…なんで…?なんで…心がない…?』
その時ココネは、すでに猿たちの心が失われてしまったことに気付きました。猿たちには、もう何をいっても効きません。
ココネは、呆然とその場に立ち尽くしてしまいました。
ぼーっと暴れる猿たちの方を見つめていると、その後ろに何やら黒い物が見えてきました。
『なにあれ…沼からなにか出て来てる…』
ココネは急いでその、ベトベトした黒いものへと近づいて行きました。
沼から静かに地面を這って、ドブ水のような黒いものはりんりん達の方へ動いています。
その正体は、沼から生まれた“ヌボーン”でした。
ヌボーンは、悲しみや憎しみの心を奪って生き、奪われたものの心は黒く変わり、何も考えられなくなってしまうのです。
それは妖精たちが最も恐れるものでした。
人間からもらったファーストフードをよく食べていた猿たちの心は、すでに痛んでいました。なので、ヌボーンは簡単にその心を奪うことができたのです。そうして奪った心によって、ヌボーンは大きく成長していました。
『これが、お母さんが言っていた奴らなの…?』
母から、昔この、こころの森で起きた“恐ろしい出来事”を聞いていたココネは、今、自分の目の前で、同じ事が起こっていると確信しました。
母は心を奪われたものたちの事を「狂獣化」と言っていました。
“狂ったように獣になって森を襲う”からだそうです。
『お母さんにこの話のことを聞くといつも、思い出したくないって顔をしていたっけ。もっと、ちゃんと聞いておくべきだったなあ…。』
ココネはそう呟くと、急いで猿たちの元へと向かいました。
何をしたらいいかわかりません。
でも、自分にしかこの事態をどうにか出来るものはいないことも、わかっていました。
ココネが、心が静まる歌を歌おうとした、その時です。
猿たちは、リンリン達に追いつき、しっぽに噛み付きました。
『だめー!!!!!』
ココネは必死に叫びましたが、やはりその声は届きません。
あっという間に、ヌボーンに支配された猿たちの手によって、リンリン達の心は奪われてしまいました。
『大変だわ…。どうしよう…』
その時ココネは、思い出しました。
『そうだ…!お母さんのことも知っていたんだもの。もみ爺やなら何か知っているかもしれないわ!』
そう言ってココネは、もみ爺やの元へと急ぎました。
グレーの空は、よりいっそう黒さを増して、笑っているようでした。
作:佐々木心音
FM-FUJI『心音の森の妖精物語』 by 富士見高原リゾート
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