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『心音の森の妖精物語』第2話 〜祈るココロ〜(2013.12.14.放送)

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※2. 放送時間の都合によりシナリオの一部を省略しています。
《作・絵》佐々木心音
《語 り》佐々木裕子
《音 楽》CO906.
《声の出演》
ココネ:佐々木心音
ゆうりん:佐々木心音

『心音の森の妖精物語』第2話 〜祈るココロ〜(オリジナル・シナリオ)

八ヶ岳に“富士見高原”というそれはそれは緑に囲まれた場所がありました。
人々は、体を癒し、心を癒す場所として訪れるのです。
そこに、誰も足を踏み入れたことのない場所があるとは知らずに・・・。
これは”創造の森”のもっと奥、想像を超えた深い森の中の物語です。

すごくよく晴れたある日のことでした。静かな森の中から、声が聞こえて来ました。
「助けてー助けてー!」
空をお散歩していたココネはびっくりして、すぐにその声のする方へ飛んで行きました。

叫んでいたのは、ゆりの花の“ゆうりん”でした。
ゆうりんは、なんだか元気がありません。かすれた声で言いました。
「ココネ・・・ごほっごほっ・・・私、喉が乾いて乾いて苦しいの・・・このごろ、雨が全く降らないんだもの・・・。」
そう言うと、ゆうりんはぐったりしてしまいました。

『ゆうりん!待っていて!すぐにお水を持って来てあげるわ!』
そう言うとココネは、水が湧き出る“不動清水”に向かって飛んで行きました。
不動清水の水は森の中で、「長生きできる水」とも言われているのです。

ゆうりんは優しくて、皆からとても好かれる子。ココネにとっても大好きなお友達でした。
でも、ココネはそろそろゆうりんが、土に帰る頃だと知っていました。
今年は暖かい日が続いていたので、花たちは皆、いつもよりも長く咲いていたのです。

ココネは持てるだけの水を持って、ゆうりんの元へ戻りました。
「ありがとう、ココネ。おかげで、元気になったわ。」
水を飲むとゆうりんは、そう言って微笑みました。
でも、心の声を聞くことのできるココネは、ゆうりんがまだ苦しんでいることを知っていました。
「本当はもっと、お水が飲みたいけど・・・これ以上ココネに、迷惑かけられないわ。」
優しいゆうりんは心ではそう思っていましたが、ココネが運べる少しの水では足りないことを言えなかったのです。

それを知ったココネは、白樺たちにお願いをしました。
『不動清水の横に立っている白樺さんまで、伝言をして欲しいの。』
「わかったよ、ココネ!僕たちに任せて!」
白樺たちはそう言うと、葉っぱを揺らして風を起こし、ものすごい早さでココネのお願いを伝えていきました。
『みんな、ありがとう!』
ココネは祈るように手を合わせました。

不動清水では、クマの“マーサ”がちょうど水浴びをしているところでした。
白樺が、ココネからの伝言をマーサに伝えると、
「ゆうりんが!?それは大変だ!よーし、僕がすぐに水を届けるよ!」
とマーサは自信満々に言いました。
そうしてマーサは、木のバケツに水をいっぱいに入れて、ゆうりんの元へ走り出しました。
「ゆうりん、今行くからね!」

マーサは、この森のくまの中で足が一番速いのです。
「マーサ、何かあったのかい!?」
急いでいるマーサを見て、遊んでいた銀杏のなんちゃんと鹿のシータが話しかけましたが、あっという間にマーサは走って行ってしまいました。

その時、歌の魔法でゆうりんを元気づけていたココネは、足音に気付きました。
『この足音は・・・マーサだ!マーサが来てくれたんだ!ゆうりん、もうすぐだからね、頑張って!』
ゆうりんが微かにうなずいて、眼を閉じました。
『ゆうりん!!!』
ココネが名前を呼んだそのとき、マーサがやってきました。

「ゆうりん、ゆうりん!お水を持ってきたよ!」
マーサは、息を切らしながら言いました。
『マーサ、本当にありがとう!』
ココネは涙をこらえてそう言いました。

そうしてココネは、マーサが運んで来てくれたバケツから水をすくって、少しずつゆうりんに飲ませました。
ゆうりんは、まだ眼を閉じたままです。
『ゆうりん、頑張って・・・。』
ココネは祈りました。
「頑張って!」
マーサも続けて祈りました。

その時です。ゆうりんが目を覚ましました。
「みんな・・・ありがとう・・・本当に・・・ありがとう。」
囁くようにそう言うと、ゆうりんはまた、静かに眼を閉じて行きました。
『ゆうりん!!』
ココネとマーサは必死に名前を呼びました。でも、返事はありません。

『マーサ、あのね、びっくりしないで聞いてくれる?ゆうりんはもう土に帰る頃かもしれないわ。』
ココネは言いました。
「え!?もう、ゆうりんと会えないの!?そんなの嫌だよ!!」
マーサは答えました。
『大丈夫よ、マーサ、また会えるわ。綺麗な花を咲かせるために、ゆうりんは土に戻ったのよ。だから、また暖かくなったら、ゆうりんに会えるわ。きっと、もっともっと綺麗になって帰ってくるわ。』

マーサは、泣きたい気持ちをぐっとこらえて言いました。
「ゆうりん、また会おうね!約束だよ!」
ココネは優しく微笑みました。マーサも微笑みました。
「お水が元気をくれたから、最後にありがとうって言うことが出来たわ。ありがとう。また、会いましょうね。約束よ。」
ココネには、ゆうりんの心の声が聞こえていました。

作:佐々木心音


FM-FUJI『心音の森の妖精物語』 by 富士見高原リゾート

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