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『心音の森の妖精物語』第3話 〜夢みるココロ〜(2013.12.21.放送)

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※2. 放送時間の都合によりシナリオの一部を省略しています。
《作・絵》佐々木心音
《語 り》佐々木裕子
《音 楽》CO906.
《声の出演》
ココネ:佐々木心音
ノン太:佐々木心音

『心音の森の妖精物語』第3話 〜夢みるココロ〜(オリジナル・シナリオ)

八ヶ岳に“富士見高原”というそれはそれは緑に囲まれた場所がありました。
人々は、体を癒し、心を癒す場所として訪れるのです。
そこに、誰も足を踏み入れたことのない場所があるとは知らずに・・・。
これは”創造の森”のもっと奥、想像を超えた深い森の中の物語です。

富士山も真っ白になって来た日のことです。今日の森は、いつもより賑やかでした。
森で一番古い木、もみの木のもみ爺やの周りを、動物たちが囲んでいます。
そう、明日はクリスマス。
毎年この森では、もみ爺やがクリスマスツリーになって、皆でパーティーをするのです。
クマの“マーサ”たちは、大きなテーブルを作り、シカの“シータ”たちは、落ち葉でカーペットを作っています。
リスたちは、赤い木の実を集めて、もみ爺やに飾り付け、そして、イノシシたちは、おいしいご飯を作っているのです。
皆、大切なパーティーの準備で大忙しです。

そんな中、木の陰で眠っているイノシシがいました。いつものんびり屋の“ノン太”です。
皆の様子を見ていた、森の妖精「ココネ」は、ノン太を見つけました。
『ノン太、まだ寝ているの?皆、頑張ってるよ。ノン太も一緒に頑張ろうよ!』
「ん〜・・・だっていつもならまだ眠ってる時間だもん。むにゃむにゃ。」
ノン太はあくびをしながらそう答えました。
『でも、ちゃんと働かないと、サンタさんからクリスマスプレゼントもらえないよ?』
ココネがそう言うと、ノン太は急に怒った顔になって言いました。
「だってさ!サンタさんにプレゼントにサッカーボールが欲しいですって頼もうとしたらね、もみ爺やが、お前はボールを蹴ることができないじゃろう?って笑うんだ。 だから僕、もうプレゼントなんかいらない!」
のんびり屋のノン太が怒るなんて滅多にないことだったので、ココネは驚きました。
『そっか・・・もみ爺やは、サンタさんとお友達だから・・・きっと、』
ココネが答えかけたとき、ノン太はもう夢の中でした。
「むにゃむにゃ・・・」
『もう、ノン太ったら〜・・・』ココネはそう言いながら、どうしたらノン太が笑ってくれるだろう、と考えました。
そこで、ノン太の夢の中をのぞいてみることにしました。
心の声が聞こえるココネは、相手の夢を見ることも出来るのです。

夢の中でノン太は、森に転がって来たボールを見つけて、サッカーをしていました。
最初は上手く転がすことが出来たノン太ですが、すぐにボールをつぶしてしまいました。
どうやら少し体が重たいようです。ノン太は悲しそうな顔をしています。
すぐに、ボールの代わりに、まん丸い石を見つけましたが、「痛いっ・・・!」ノン太は大きな声で言いました。
さすがに石は、蹴ると痛いようです。ノン太はもっと悲しそうな顔をしました。

その夢を見たココネは、ノン太が本当にサッカーをやりたいということを知りました。
『それなら、私に良い考えがあるわ!!』ココネはキラキラと眼を輝かせ、もみ爺やのもとへ飛んで行きました。
ココネの【良い考え】を聞いたもみ爺やは、眼を細めて喜びました。
「それは良いのぅ。ようし、早速サンタさんに頼んでみるかのぅ。」そう言うと、もみ爺やは続けて呟きました。
「わしは、ノン太に悪いことをしたなぁ。本当にサッカーをやりたかったんじゃな。」
『大丈夫よ、もみ爺や。うまくいったら、ノン太はきっと喜んでくれるわ!』
ココネはそう言って、支度をする皆のところへ戻って行きました。

お月様が顔を出して、すっかり暗くなった頃。
『じゃあ、最後の仕上げね!』ココネはそう言うと、歌を歌い出しました。
すると、金色に輝くお星様が空からやって来て、もみ爺やの頭の上に乗っかったのです。
その瞬間、「完成!」森中の動物たちが一斉に言いました。
森のクリスマスパーティーの始まりです。
おいしいご飯を食べながら、皆で歌を歌い、踊りを踊って、語り合いました。
その間、ノン太はずっと眠っていました。

ノン太が大あくびをしてやっと目を覚ました時には、もうパーティーは終わっていました。
もう、周りには誰もいません。もみ爺やも眠っていました。
静かな森に、ノン太はひとりぼっちでした。
「誰か起こしてくれてもいいじゃないかっ。」ノン太はそう良いながら、ノソノソと、もみ爺やの方へ近づいていきました。
「きっとお手伝いしなかったから、僕にはプレゼントがないんだろうな・・・。悪い子は、サンタさんに嫌われちゃうもんね。あーあー、ちゃんと起きれば良かったなーあ。」
ノン太はそう呟きました。

その時、もみ爺やの頭に飾ってあるお星様が、いきなり光りだしました。
「うわあ、眩しいっ!ねぇ、そこにだれかいるの?ココネ?」
ノン太は、光るお星様の方を見て言いました。眩しくて、ノン太からは影しか見えません。
『ノン太に、クリスマスプレゼントを持って来てくれたんですって。』
そう言ったココネの隣から、知らない声がしました。

「ふぉっふぉっふぉ。ノン太くん、メリークリスマス!もみ爺やに、感謝するんじゃぞ!」
ノン太には、それがサンタさんの声のように聞こえました。
「サンタさんなの?」ノン太がそう聞いた時、お星様の光が小さくなっていきました。
そうしてすっかり光が消えた時には、もうココネの隣には誰もいませんでした。
その代わり、ノン太の眼の前にはプレゼントの箱がありました。
びっくりしたノン太は、急いでその箱を開けました。
「うっわぁーーー!ボールだ!カッコイイ!」
プレゼントは、木で出来たサッカーボールだったのです。

『もみ爺やがね、自分の枝をサンタさんに渡して、“これでノン太に、潰れなくて軽い立派なボールを作ってくれないか”って頼んでくれたのよ。』ココネは言いました。
ノン太は、嬉しくて嬉しくて飛び跳ねました。
「もみ爺や、ありがとう!」
そうして一晩中、ノン太はサッカーボールで遊びました。
それを見ていたもみ爺やは、気付かれないように少しだけ、葉っぱを揺らして喜びました。
「ありがとうなぁ、サンタさん。」
今年も、みんなが笑顔になった、森のクリスマスでした。

作:佐々木心音


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